自転車ブーム
都心をあちこち気軽に見て回る手段は電車、徒歩、バス、などいろいろあるのだろうが、実は自転車がいちばん手ごろかなと。折りたたみ自転車を持って電車で東京までいき、そこからあちこち走るとか。
そんなわけで折りたたみ自転車が欲しいと思ってあれこれ見ているのだが、なんだか、今、自転車ブームだそうで。
折りたたみ自転車といっても1万円ぐらいのから、えーっというような値段のものまでさまざま。
あんまり安いのはだめらしい。重いとか、強度不足とか。
どうせなら、軽くてよく走り、とりまわしも便利なの。値段はまあ、そこそこ。
そんな条件でも選択肢はいっぱいあって、いくつか試乗もさせてもらった。
車輪が小さいのは軽くて運びやすいが、走るのはいまいち。ふらふらするし。
やはり20インチぐらいのあれかな、これかな、などと考えていたある日、ふと自宅から東京駅まで自転車でいけないこともないかなと。
で、先日いってみたらなんのことはない、2時間余りでついてしまった。
で、ふらふらと有名なビルの外観をみたり、六本木の新美術館をみたり。
あれ、意外と小さく見えるのが不思議。写真ではすごく大きく見えたのに。
ちょっと、いや、かなり不愉快だったのが、警備員。自転車で敷地にはいろうとしたら、「はい、そこの自転車、降りて!」ときたもんだ。もう、いかないかも。
まあ、そんな小ネタも仕入れつつ、自転車による都心徘徊もたまにはいいな。
帰宅後はさすがにへとへとだったけど。

手持ちの自転車でじゅうぶん
なので、新しく買わなくてもよいのだが、逆に欲しくなったりして。
折りたたみにこだわることもないならば、選択肢はさらに広がる。
自転車にもオーダーメードってあるけど、1台であれこれ欲張ると中途半端になりそうだ。実は何台も欲しい自分を発見。

[book]老人と趣味
そんなわけで、このごろ自転車の本ばかり読んでいるが、実に面白い本が。
こぐこぐ自転車
著者の伊藤礼伊藤整の二男。といってもこの本はそんなこととはほとんど関係ない。著者が六十歳を過ぎて自転車にハマり、あちこち走ったことをつづったエッセイ。
文章の枯れ具合と自転車にかける熱のアンバランスが魅力的。
鎖骨骨折や顔面強打などひどい目に何度もあっているのに、まったく懲りないし。
「自転車に乗って知った世の荒波」という章があるのだが、そう、ブームとかいって乗ってるほうは張り切っていても世間の風は冷たいのだ。
で、そういう風に抗しようという団体があったり、自転車乗りは自転車乗りでいろいろ苦労していることも最近知った。(つい最近も自転車が走るべきは車道か歩道かという問題が警察や国会の一部で大問題になっていたらしい。ていうか、今もだけど。道路交通法の改正案が今度の国会で決まるらしく、自転車乗りたちはその行方をじっと注目中なのだそうだ。)
この本はそういう団体とはたぶん関係ないのだが、似たようなことが面白く描かれているのがすごいと思う。


私は青梅街道で、クラクションで脅かし、すれすれに抜いていったタクシーを追跡することになった。そんな危険な嫌がらせをして抜いていっても車道は前が支えているから、結局は自転車のほうが速いということを見せつけるために、私は空いている歩道に駆け上がり、前方でまた車道のタクシーの前に戻ると意図したのであった。
  (中略)
段差に前輪をとられて私は転倒した。着地したときグシャという音が聞こえたような気がした。
(中略)
あのタクシーは前方を走っていたから多分気づかなかったろう。それが慰めだった。
結局歯を2本と親指骨折だったという。
幹線道路では自転車と車は戦争状態なのだ。で、負けるのは自転車。わかっていてもカッとなってこんな事態に陥ってしまう。個々のドライバーのマナーも悪いがもっと悪いのは道路のありかたであって、道路がまともになるまでは、御身大切で適当に妥協していかないと命がいくつあっても足りない。(ちなみに上記の状況ではもちろんタクシーも悪いが、著者も悪い。歩道をそのように使うのは違法なのだ。)
この本にはそんなことは書いていないが、他人事のように淡々と描かれると凄みとある種のユーモアを感じる。かっこいいな。
伊藤がいいのは、いい年をしてあちこち自転車で走り回るなんてかっこ悪いのは承知。だけど面白いから、乗りたいから乗ってんだ、文句あっか、という雰囲気。
これと比べると次の本は、自転車ってすごいよ、健康的だし、エコだし、21世紀だよ、と声高に主張して、ねえ、すごいでしょほめてほめて、ぼくをほめて!といっているかのように感じてしまう。
おじさん自転車革命
まあ、これはこれでそれなりに面白いけど。