[book]耐震偽装
耐震偽装―なぜ、誰も見抜けなかったのか
いわゆる姉歯事件の本。といっても事件そのものへの言及は少なく、どうしてこんな事件がおきてしまうのか、建築生産システムに穴がある、どうしたら再発防止できるのか、ということを述べた本。
著者はジャーナリストとはいえ大学院で構造を専攻した建築業界人。制度を改めるべきと具体的な提言までまじえて強く主張しているが、マンションを買う側もちゃんと勉強しないとだめだ、と。
しかし、この本のとおりにやろうとおもったら購入者は相当な労力をさかないとだめで、ここまでできる人はすくないだろう。
また、今回の事件で悲しいのは、それなりに勉強した人や、何十万というお金を払ってバイヤーズエージェントにチェックを依頼した人までひっかかってしまっているということだ。
それだけヒューザーとかいう会社の売り方が巧みというか、そういう人のツボを突く売り方をしてたみたい。無駄を排して合理的な設計をして広い部屋を実現しました、みたいな。勉強する人はこういうのに弱いと思う。
しょうしょう勉強したぐらいじゃごまかされるならば、買い手はどうするか?もっと勉強するか。
でも勉強すればするほど買う気が失せるんじゃないかな。それほど、マンションってやつは危うい。
あるいは常識という名の世間知に頼るか。要するに妙に安いのは避けるとか。名の通ったものだけを候補にするとか。まあ、普通はこっちなんだろうな。だからマンションって横並びというかフツーなのばかりなのかも。あれは比較や勉強のコストを抑えた結果なのだ、なんて。
ところで、この本のあとがきにはさりげなくすごいことが書いてある。著者の細野氏は、ちょうど事件が表面化したころ体調不良で取材競争に出遅れたというのだが、その理由がマンションだというのだ。
夜になるとキーンという音がして聴覚過敏症になってしまったとか。結局3ヶ月で別のマンションに引っ越したとか。
建築業界の専門家ですら、こんな物件をつかんでしまうのだからなにをかいわんや。
ていうか、細野氏は姉歯事件よりもその自身の体験をこそ本にすべきだと思う。もし細野氏がジャーナリストならば。